行政書士試験を受験しようと思って、通信教育各社を比較していると、目に留まるのがアガルートの異常とも言える合格率。
令和元年の合格率は、なんと72.7%で、全国平均の6.32倍になっています。

普通に考えれば、「ありえない、フェイクニュースの一種だろう」と一笑に付すでしょうが、「もしこの合格率が本当なら、いや、この半分の合格率があるなら選ばないと損をするのでは・・・」と不安になってしまいませんか?

ネットの情報は嘘が多いので、アガルートの合格率も嘘のように思えますが、アガルートには関連会社にアガルート法律会計事務所があり、明らかな嘘を提示するはずがありません。

「法律事務所の関係会社ならホントだろうな」と考えてしまいますが、合格率が明らかな嘘ではないとしても、何らかの操作がなされた数字である可能性があります。好き勝手に操作してしまうと明らかな嘘になってしまうので、合格率というちょっと曖昧な言葉の射程圏内で操作すれば明らかな嘘ではなくなります。
まずは合格率とは何か、合格率は操作できるのかということについて検証していきましょう。

行政書士試験の合格率とは何を意味するのか知っていますか?

一般的に合格率とは、受験した人のうち合格者の割合を指します。
令和元年度の行政書士試験受験者数は39821人で合格者は4571人。合格者の割合は4571÷39821=0.1147…で約11.5%になります。

この「11.5%」という割合ですが、操作されていることをご存知ですか?
平成21年度から令和元年度までの合格率の推移を見てみましょう。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和元年度 39,812人 4,571人 11.5%
平成30年度 39,105人 4,968人 12.7%
平成29年度 40,449人 6,360人 15.7%
平成28年度 41,053人 4,084人 10.0%
平成27年度 44,366人 5,820人 13.1%
平成26年度 48,869人 4,043人 8.3%
平成25年度 55,436人 5,597人 10.1%
平成24年度 59,948人 5,508人 9.2%
平成23年度 66,297人 5,337人 8.1%
平成22年度 70,586人 4,662人 6.6%
平成21年度 67,348人 6,095人 9.1%

11年間の平均合格率は10.4%。最低合格率が平成22年度の6.6%で、最高合格率が平成29年度の15.7%。5%を切ったり、20%を超えるような合格率にならないよう10%前後に調整されていることが分かります。

「10%前後に調整することなんてできるはずない」と思ってしまうかも知れませんが、出題者もプロなので、ある程度は出題難易度で合格率を調整することができます。それでもなお過去の合格率と著しく異なってしまった場合は、「補正的措置」を行い、過去の合格率との均衡を図るようになっています。

例えば、令和元年度に5000人の受講生を有する予備校が、全員合格させたというような状況が生じたとします。この場合、合格率が(4571+5000)÷(39812+5000)=0.213…となり、平成22年度の3倍強になるので「著しく異なる」と判断されて、「補正的措置」が行われるはずです。

「補正的措置」は過去に一度だけ行われています。
行政書士は180点で合格なのですが、平成26年度は166点で合格となりました。
平成22年度から徐々に易しくして、平成25年度に10%を超えたので、難しくしてみたら難しすぎたようです。

平成27年度からは「補正的措置」をおそれて、10%以上で推移していますが、平成28年度が10%とギリギリだったので、平成29年度は15.7%と非常に易しくなってしまいました。
その後、平成30年度、令和元年度と緩やかに合格率を下げているので、難易度調整も慣れてきたのでしょう。

このように行政書士の合格率はある程度操作されたものなのです。操作できるものなのですから、アガルートの合格率も何らかの操作をしてあるものと考えるべきです。

アガルートの合格率は、「アガルートアカデミー基幹講座(入門総合講義・演習総合講義・これらを含むカリキュラム)受講生の合否アンケート集計結果」という補足がついているので、具体的にどのような意味を持つのか探っていけば、アガルートの合格率がどの程度信頼できるかについて判明しそうです。
まずは、アガルートの行政書士講座の基本情報から押さえていきましょう。

アガルートの行政書士講座基本情報

アガルートの行政書士講座はどのような講座なのでしょうか。基本情報をまとめてみましょう。

企業名 株式会社アガルート
通信講座名 アガルートアカデミー
通信講座数 18
主力通信講座 司法試験・予備試験
行政書士講座講師名 豊村慶太・相賀真理子
講師の得意分野 豊村:行政書士、相賀:マスコミ
講義動画 Web
テキスト Web+冊子(フルカラー)
過去問 冊子
記述式対策 冊子
模試 1回
その他 合格祝い(全額返金)、受講料割引
入門総合カリキュラムの価格 20,8000円~26,8000円
演習総合カリキュラムの価格 24,8000円~30,8000円
上級総合カリキュラムの価格 27,8000円

アガルートアカデミーを運営する株式会社アガルートは、法律と教育を中心としたIT企業です。オンライン医学部予備校「アガルートメディカル」も運営しているように、難関試験を指導する一方、士業や管理部門の転職を支援する「アガルートキャリア」も運営しています。

関連事業所にアガルート法律会計事務所やアガルート登記測量事務所があり、弁護士が増えすぎたので、弁護士業務以外に手を伸ばしている多角化企業と考えられます。

アガルートアカデミーの中心的な講座は司法試験・予備試験ですが、法律関係の講座が4つなのに対し、不動産関係の講座が5つなので、不動産関係が伸びてきていると考えられます。

特に測量士試験は、アガルート登記測量事務所を抱えていることから、講座の信頼性も高くなりますし、行政書士試験と比べて通信教育の競争も激しくないことから、利益率の高いメイン講座になっていくものと思われます。

司法試験・予備試験講座のついでに作られた感じがある行政書士講座ですが、現在存続か撤退かの分岐点に差し掛かっていると思われます。

では、なぜそのように思えるのか。
具体的な理由については以下の3点が挙げられます。

  1. 行政書士試験の通信講座は競争が激しく、なかなか利益が上がらないこと
  2. 講師2人体制や全額返金の合格祝いといった高コスト体質
  3. 方針がぶれてきていること

上記の理由から恐らく、行政書士講座で収益化していくこと自体が困難なのではないかと考えられます。

通信講座は競争が激しく、なかなか利益が上がらない

まず1つ目の業界分析になりますが、行政書士試験の通信講座は、予備校がオプションとして用意している通信講座と、通信教育専門の通信講座に分かれます。アガルートの行政書士講座は通学も用意しているので、予備校に近いスタンスをとっているように見えますが、通学はゼミなので、予備校の授業とは大きく異なります。

アガルートの行政書士講座は通信教育専門に分類するべきなのですが、資格取得通信講座最大手のユーキャン、実績のフォーサイト、非常識合格法のクレアールが先行していて、アガルートや資格スクエア、スタディングが追いかける図になっています。

予備校系と通信教育専門系に分かれる上、通信教育専門だけでも6社以上もあるのですから、過当競争になっていて、簡単に利益が上がる状況ではありません。

講師2人体制や全額返金の合格祝いといった高コスト体質

次に2つ目の高コスト体制ですが、講師が2人いると、単純に賃金が倍かかることもありますが、2人分講義動画を作る必要があり、アガルートの講義動画は300時間と長いので、他社より費用がかかりすぎています。さらに合格祝いに全額返金があるので、場合によっては収入0というケースもあり得ます。

方針がぶれてきている

最後に3つ目の方針ですが、先行3社のうち、中上級者向けの講座を開講しているのはクレアールだけなので、クレアールをターゲットとして中上級者向けの受験に定評がある豊村慶太氏を起用したと考えられます。令和3年度向けから「上級総合カリキュラム」を開講したことからも、上級者を顧客にしていることが分かります。

しかし、講義時間が約300時間と長く、合格ラインを効率良く目指すフォーサイトとは一線を画していたのですが、アナウンサーから転身した相賀真理子氏が合格ラインに言及していることで、フォーサイトもターゲットに入っている状態になってしまっています。

一気に業界トップを目指すという発想とも思えなくはないのですが、それならばフォーサイトを超える効率性を目指すべきで、やはり方針がぶれているだけに見えます。

以上から、存続の危機にあるのは間違いないのですが、撤退するとしても閉店セールをやって資金を回収するでしょうし、受講生に旨味があるなら期待したいところです。

教材に関しては、講義動画もテキストもWebで見る形になっていますが、テキストは冊子も含まれています。通信環境がないだけで勉強ができなくなるリスクはありません。

模試が1回しかないのは明らかに少なく、他社の模試を受ける必要が出てきます。
アガルートの行政書士講座は、初学者向けの「入門総合カリキュラム」、中級者向けの「演習総合カリキュラム」、上級者向けの「上級総合カリキュラム」の3種類に分かれていて、定価は20~30万円に設定されていますが、割引や合格祝いもあるので、見た目ほどの経済的負担はありません。

合格祝いは全額返金を特徴としていて、閉店セールのような気がしますが、受講料は競合他社に比べて高めになっており、合格できなければ損な気がします。令和元年度の合格率が72.7%ということで、無料で行政書士の資格を手にできるチャンスと考えてしまいますが、行政書士試験の合格率は1割程度なので、72.7%という合格率は信じられない数字です。

アガルートアカデミーでは行政書士講座がメイン講座ではないこと、行政書士講座は過当競争で利益が上がりにくいのに高コスト体制であること、全額返金の合格祝いが競合に勝つための唯一にしてせめてもの苦肉の策に思えることから、令和元年度の合格率72.7%は、調整された数字であるようにしか見えません。

「アガルートアカデミー基幹講座(入門総合講義・演習総合講義・これらを含むカリキュラム)受講生の合否アンケート集計結果」との注意書きは、受講生のうち上級者だけにアンケートを取ったと考えられます。

全員にアンケートを取ったものの、上級者だけしか回答しなかったという言い訳もできますし、「上級総合カリキュラム」を新設したのだから、「上級総合カリキュラム」を受講すれば72.7%になるとも主張できます。

アガルートの行政書士講座の合格率、72.7%を信じるか信じないかはあなた次第です。